後期高齢者医療制度、特定健診、フィブリン糊

 このところ、医療に関する様々な話題が新聞やテレビを賑わせています。が、院長にとっては腹立たしい事ばかりです。厚生労働省や舛添大臣のいい加減さ、パフォーマンスを優先させる態度に、末端で身を粉にして働いている医療従事者の日々の努力を踏みにじられる思いです。
 まず、後期高齢者の問題。4月1日に新しい保険証が届いていない方が多数おられる事を受けて、舛添大臣は、「保険証がなくても年齢が証明されれば古い保険証で受診してよい。そのように医療機関に通達する。」と、テレビの中で断言していましたが、埼玉県朝霞市の保険医療機関、さない耳鼻科クリニック(院長は日本医師会会員、朝霞地区医師会所属)には何の連絡もありませんでした。お年寄りの中にも医療費が3割負担のかたもいらっしゃる訳で、仮に、保険証がなくて年齢だけをみて1割だけご負担いただいて、その方が1度の来院で軽快されてしまった場合、残りの2割はどこに請求すれば良いのでしょう? 「新しい保険証がなくても、医療機関を受診してよい」という公文書の記載は、少なくとも院長の眼には触れていません。また、保険証が届くまで、のどが痛いのを我慢されて、病状を悪化させてしまった方もいらっしゃいました。
 次に特定健診。報道では、「4月から開始された」とありますが、少なくとも朝霞市ではまだ何も始まっていませんし、料金がようやく決まったという段階で、実施時期は7月から11月が予定されているだけです。さない耳鼻科クリニックでも実施できるよう申請していますが、データの電子化処理をどこに委託するか医師会全体で交渉中という事で、具体的に何も始まっていません。こういった細部をきちんとつめていない段階で、華々しく報道させてしまう事に、末端で働くものとしては苦々しい思いです。
 最後に、非加熱のフィブリン糊とC型肝炎ウイルス感染の問題です。現在、日本国内で行われている多くの耳の手術では、加熱され、ウイルス粒子をフィルターで濾過した生体接着製剤(別名フィブリン糊、製品名はボルヒール等)が使われています。しかし、薬害肝炎ウイルス感染で問題になっている製品(旧ミドリ十字製、1988までに製造されたもの)とは全く別物で、製造された年代も異なります。それなのに、厚生労働省は、問題になっている製品の説明を詳しく行わず、「フィブリン糊」という名称だけを用い、対象となる製品が納入された医療機関名を各新聞の数ページを使って大々的に発表しました。製品の詳細は、心ある新聞の紙面に小文字で記載されていました。おそらく、患者さんたちは、しないでよい心配をし、パニック状態に陥っていらっしゃる方もあるかもしれません。現在対象となっている製品名は下記URLに記載されています。
  http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai/c-kanen.html
おそらく日本の医薬行政のトップにいる舛添大臣は、フィブリン糊と呼ばれて現在使われている、より安全な製品がある事を知らないのではないでしょうか?
 一つのいい加減な発言や、発表が引き起こすだろう波紋を熟慮するより、自己弁護的なパフォーマンスを優先させる舛添大臣や、厚生労働省、ひいては今の政府に強く抗議します。「国の機関の発言」の重さを彼らは理解しているのでしょうか?

今日は、佐内院長怒りの発言です。