家族の話

 母の法事に参加してくれた叔父が、息子に対する思いを書いた私のブログを「母子家庭の印象だね」と言ってくれて、夫のことを書くのを忘れていたことを思い出しました。空気みたいな存在なので、手伝ってくれて当たり前と思っていたのでしょう。ごめんなさい。夜間に、救急で私が病院から呼び出しを受けた時、泣いて私にすがる幼い息子を大きな腕で抱きしめて、お父さんと一緒にいようね、と世話をしてくれたのは他ならぬ夫です。ずーっと生化学の研究をしてきた人で、いわゆる処世術には疎いけれど、少年のような心を持った優しい人です。現在、某T市に単身赴任中。
 夫以外にも私を支えてくれた家族がいます。大阪から千葉に転居して息子の面倒を見てくれた舅や姑(二人とも故人となってしまいましたが)、夫が交通事故にあったとき、私の代わりに付き添って介抱してくれた姉、亡くなる前の母や、一人暮らしになってしまった老父をなにくれとなく気遣ってくれた叔父、叔母、いとこたち。自分のことだけに夢中で時間を過ごしてきたけれど、今、私を支えてくれた人たちのことに、想いを馳せています。ありがとう。彼らは、開業直後、さない耳鼻科クリニックの経営を心配してくれて、自ら患者さんとして受診してもくれました。 
 診療をしていて、患者さんの家庭環境とか、仕事とか、その人のバックグラウンドを考慮しながら、治療方針を決めるようになったのは、私が自分の家族のことも考えられるようになった頃と一致しているような気がします。父親のことを思えば、足腰が弱っているお年寄りに毎日通うよう強要することなんてできないし、私自身のことを考えれば、お年寄りのご家族に必ず付き添うように頼むのも申し訳ない。医者になりたての頃は、病気を治すことがすべてに優先され、まるで正義の味方のように振る舞ったこともありましたが。
 朝霞に来て、ようやく1ヶ月半。相変わらず昼の散歩を続けています。おいしいものもたくさん食べさせていただきました。朝霞の方々の暮らしの様子や、様々な御家族の姿を目に焼き付けて、診療に役立てていきたいと思っています。

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