医院の品格

 さない耳鼻科クリニックを朝霞で開業してからちょうど3ヶ月が経過しました。耳鼻科としての医院のスタイルもだんだん固まってきたように思います。そして、今、当院で一番の財産だと誇りに思っているのが、職員達です。
 今週、新潮新書で「国家の品格」(藤原正彦著)を読みました。共感することが多かったのですが、「朝霞で耳鼻科クリニックを経営している院長」としては、特に2つの点について考えさせられました。
 一つは、「国家の品格は、それを構成する一人一人の国民が情緒や道徳や自然を愛する日本古来の感性を持って、自信を持って発言し、行動することで決まる(表現は私の解釈です)。国家の品格とは、まやかしの論理や、自由や、貨幣経済に翻弄されず、独自の誇りを持ってこの国際社会の中で生き抜いて行く力である」。という、この本の論旨。もう一つは、後半の一節、「人間の脳は99%が利害得失で占められているが、しかし、残りの1%を何で埋めるか、これが非常に重要だ。」というくだりです。
 職員を採用する時、私が一番こだわったのが、何の為に耳鼻科で働きたいのか?という動機でした。結果的に見ると、さない耳鼻科クリニック職員採用のキーワードは、「人と接したい」「ありがとうと言われたい」ということでした。開院当初は、医療事務に慣れていない者もいて、患者さんにはいろいろご不快な思いをさせてしまったかもしれません。この場を借りて、お詫び申し上げます。しかし、今、「患者さんにわかりやすいように、この掲示はこうしたらどうでしょうか? ここに手鏡があれば、女性の方は助かるのではないでしょうか? 受付順番は現状だと不満が出るので、こうしたらどうでしょう? 診療報酬の請求事務で、院長のうっかりミスをなくすには、このようにしたらいいんじゃないか? 院長の口調はせっかちで、患者さんはせき立てられているように感じるから、もっと患者さんが落ち着くように話すべきだ。診療の流れを円滑にするためには、器具の配置はこうしたほうがいい。」等々、 彼女達は堂々と意見を述べてくれます。院内の様々な仕掛けは、ほとんどが、さない耳鼻科クリニックの職員達が、自ら率先して作り上げてくれたものです。検査システムや消毒や細かい医療器具の準備は、頭頸部外科の経験が深いベテラン看護士と、本当に真摯に医療に取り組みたい若い看護士、自ら子育てを経験し人情の機微をわかってくれる臨床検査技師が、作り上げてくれました。私は、お金の算段だけ、額にしわを寄せながらしていれば良いのです。(これは失言ですね。私の仕事は、耳鼻科診療です。)本当に有り難いことです。
 職員がある一つの目的を共有して、共通の感性で耳鼻科の診療業務を遂行していくこと、このモチベーションを持続できるようにして行くことが、さない耳鼻科の骨格を作っていくのだし、院長の重要な仕事だと思っています。
 最後に、二つ目。1%をなんで埋めるか? それは、私たちがよって立つところ、出発点。一番大切にしていること。安易に表現するのは危険だけれど、私にとっては、自分の行動が何かの役に立つこと、かな? 朝霞の人たちのため? 社会的な存在意義? 家族のための自分? 人類のため? うーん・・・・・時々、この問いになんと答えるか考えること、でしょうか? 

 ホームページのリニューアルが大幅に遅れてしまい、中耳炎の説明もまだアップしていません。お待ちになっていらっしゃる方には、本当に申し訳ございません。今月中にはやり遂げますので、今しばしの猶予をお願いします。